『日本の面影』 ― 小泉八雲のNHKドラマ

ラフカディオ・ハーンが主人公のNHKのドラマ『日本の面影』の録画ビデオを先日観た。

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         富山大学ヘルン文庫にある八雲(ハーン)の肖像
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                ジョージ・チャキリス演じる八雲

1984年(昭和59年)、今から26年前に、NHKで『日本の面影』という80分のドラマが4回シリーズで放送された。
このドラマは、明治中期に来日して教師となり、日本や怪談を世界に紹介した作家、ラフカディオ・ハーン(Lafcadio Hearn) を主人公にした、彼の数奇な半生を描いている。 私はTVをほとんど見ない日々だったので、このドラマのことは最近(去年)知った。今回、八雲会の会員であるM先生が十数年前BSで再放送された時に録画して持っておられたビデオを見せていただいた。

八雲会で、一昨年から、ハーンの著書である'The Glimpse of Unfamiliar Japan'(「知られざる日本の面影」)を輪読していたが、ドラマのタイトルはここからとっているのだろう。 ただし、内容は、この松江や出雲の見聞録から八雲の思想や視点を取り入れているが、日本での日常的生活や歩み加えて、山田太一がドラマにしている。

ドラマは、ニューオリンンズで新聞記者をしていたハーン
が、時の万国博で日本と日本文化に魅せられ、40歳の時、通信記者として日本を訪れ、また、その時知り合った日本の政府関係者の世話で、島根県の松江に、島根尋常中学・師範学校の英語教師として赴任し、日本に滞在することになった。その後熊本、東京と教師として移り住み、54歳で没するまでが描かれている。

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     良き理解者で親友となった尋常中学の教頭・西田(小林薫)と
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      やがて没落士族の娘小泉セツ(壇ふみ)を愛し結婚する

ラフカディオ・ハーンといえば、放浪の作家とも呼ばれる。
1850年(嘉永3年)、アイルランド人の軍医の父と、ギリシャ人の母との間に、ギリシャのレフカス島で生まれ、2歳から19歳まで父の故国アイルランドで暮らすが、その間父と母は離婚、父の大叔母に育てられる。大叔母が破産し、19歳でニューヨークへ、さらにシンシナティへ移り、編集者や新聞記者としての仕事を確立していく。25歳で黒人女性と結婚するが破綻して、27歳でニューオリンズへ
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編集職、木版画作家、翻訳や評論の著書出版、などに従事し、東洋の文献や文化に興味を深め、1884年(明治17年・34歳)に開かれた万国博を取材中、日本館の美術や教育に強い関心を持つ。以後、ニューヨークなどを拠点に著作や翻訳出版で活躍する一方、万博で知り合った日本政府派遣の服部一二や、パーシヴァル・ローエルの『極東の魂』に大きく影響され、1890年(明治23年・40歳)日本へ。
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松江の英語教師となり、翌年、松江藩士の娘小泉セツが住み込みのお手伝いとなりやがて結婚。松江に来て1年後、熊本の第五高等学校へ赴任。長男誕生。1894年(明治27年・44歳)『知られざる日本の面影』が出版される。熊本を去り、神戸のクロニクル社へ就職。

1896年(明治29年・46歳)日本へ帰化し、小泉八雲と改名。東京帝国大学文科大学講師になり東京へ。翌年次男が生まれる。
1903年(明治36年・53歳)<strong>東京帝国大学を解雇・辞職。学生が留任運動。
1904年(明治37年・54歳)早稲田大学文学部に出向。自宅で狭心症のため死亡。
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                   ハーンの肖像

このドラマでは、ハーンのアメリカ時代から、日本に来て帰化し、亡くなるまでの系譜が、妻のセツが語る怪談物語(雪女や耳なし芳一)の劇中劇を入れて、ハーンを紹介するドラマとしても、叙情的でわかりやすい。日本の文化や伝統、日本人の心に魅せられたハーンの目を通して、明治の日本の風景や人々の暮らしの映像が美しく幻想的である。 また、両親や家庭の愛に恵まれず、天涯孤独のハーンの寂しさと、セツとの結婚によって出来る家族へ愛が、印象的。『ウエストサイド・ストーリー』で有名になったジョージ・チャキリスが、ハーンの優しさや苦悩を素敵に、自然に演じていた。日本を愛するハーンの視点や姿勢から、私たちの心の中にも何かが呼び起こされ、感動的だった。また晩年、近代化の中で日本への失望も生まれるが、妻や家族への愛が最後までハーンの拠り所となったのはほっとする。

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            『日本の面影』の脚本を書いた山田太一さん

ところで、今年の3月、読売新聞のコラム「時代の証言者」で、脚本家の山田太一さんが、自らの作品であるこの『日本の面影』について書いていた。記事によると、彼は「古い日本に魅せられた外国人作家を通して、日本人が近代化の恩恵と引き換えに捨てた民衆の精神文化の輝きを書きたかった」と言っている。何年も前から、ハーンについて書きたいと思っていたとか。また山田氏自ら主役のハーンのオーディションのため渡米し、そこで話を聞いたジョージ・チャキリスさんが「ハーンと同じギリシャ系なので」と名乗りを上げてくれた。全く日本語が出来ない彼だったが、ホテルで壇ふみさんが手伝って懸命に台詞を覚えた、ということ。このドラマの脚本で、向田邦子賞とギャラクシー賞大賞を受賞。93年には『日本の面影』を舞台化して風間杜夫主演で、ハーンの故郷のアイルランドとロンドンで公演をした。

『日本の面影』 富山県で再放送を!
この26年前のドラマを、私の周囲の人たちも、多くの人が覚えていた。「まだ若い壇ふみさんが素敵だった」「チャキリスが八雲によく合っていた」などなど。
富山八雲会の活動の1つとして、ヘルン文庫の存在を、特に地元富山の人たちにもっとアピールしたい、英語教育で昔のようにハーンの作品を取り入れて、子どもたちに作品や彼の存在、文庫の存在を知らせていきたい、とするとき、パンフレット、講演、いろいろ手段はあるが、家庭のテレビに流れるマス・メディアとしてのドラマは、一度に一番効果的に受け入れられるものではないだろうか。・・・というわけで、昨年ハーンゆかりの島根県が記念事業として島根県全県にNHKからこのドラマを放送したと聴くので、何とか富山でもできないか考えている。NHKにアタック!

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この記事へのコメント

noda_souzen
2011年10月14日 13:28
つい先日(2011/10)VHSテープを整理していたら59年とBS2(60年頃)で放送があった「日本の面影」が出てきました。
家内がラフかディオ・ハーン記念館の前に3歳前後まで住んでいたので思い出にこの「日本の面影」を大事にとっておきました。住んでいたところは今はお土産屋さんになってました。
残念なことに59年のときは第4回の放送のとき臨時ニュースが入り終わりがちょっと抜けてしまいました。
BS2放送の録画は設定をまちがえたか第4回の録画時間が始めの20分間が欠落。
仕方なく第4回はPCで59年版始め20分とBS2版をつなぎ合わせ編集して作り直しました。
そんな全4回分をここ数日で2度ほど一気に見てしまいました。
山田太一さんの脚本がすばらしくもう少しきれいな画像で見たいこともあり再放送を待ち望んでいる一人です。
そんなことを思いつつブログを読ませていただきました。
casablanca
2011年10月15日 10:13
ご丁寧なメッセージをありがとうございました。
このドラマは時間を経ても本当に素晴らしいドラマですね。何とかもう1度再放送して欲しいです。
小泉八雲の存在は、明治から遠く経ったせいもありますが、英語の教科書から彼の作品「むじな」などが消えて以来、若い世代には特に薄れつつある現状です。明治時代、異国から来て日本を愛し日本に骨を埋めたハーンの生き方や、日本見聞録などで当時世界に日本を知らせたその素晴らしい著書、をいつまでも日本人に忘れないでいてほしい、そのためにはこのドラマは非常に大きな役割を果たしていると思います。
みなさんそれぞれにハーンとの関わりや思い出があることを知り嬉しく思います。
taka
2012年02月01日 14:21
ドラマ「日本の面影」第2回から4回までは観まして、感動した覚えがあります。めまぐるしく変わる世相の中、どっしりとした創りの、このようなドラマをもう一度放送してほしいです。

思想的な面はともかく、古き日本のよさをベーシックに、よどみなく楽しい時間を過ごさせてくれる秀逸のドラマと思います。

凛とした美しさの壇ふみさん、とつとつとしていながら、重厚感にあふれたチャキリスの好演を、どうしても生きているうちに、も一度観てみたいです。
casablanca
2012年02月06日 20:41
コメントいただきありがとうございます。数日、雪かきに追われて?頂いたことに気づかず失礼致しました。
このページを書いたのはもう2年近く前ですのに、まだ掘り起こしてくださいまして嬉しいです。このページへのアクセスも今だ増え続けており、taka様のように多くのかたがこのドラマに深い印象を持たれたことが伺えました。本当に、ぜひもう1度再放送をしていただき、多くの人に、ドラマと、そして小泉八雲の素晴らしさを知って欲しいです。メディアとしては、ドラマの力は大きいですね。
通りすがり
2012年07月12日 13:19
突然で恐縮です!
わたしは、初回の放送を見たのですが、大きな感動を覚えました!
なかでも、「孤独に耐える精神が真の連帯を生み出す…」といったようなチャッキリスのせりふが、今でもこころにのこっています。
casablanca
2012年07月12日 23:44
このドラマの素晴らしさを改めて感じる「通りすがり」さんのコメントでした。ハーン自身と、その人生を存分に抽出させたドラマだったと思います。
さーちゃん
2012年07月30日 01:17
私も深く印象に残っている名作ドラマの一つです。年々「また見たい」と思うようになっていたので、キーワード検索してみましたら、同じように思っておられる方がいたので、すごくうれしいです。
キャストも素晴らしかったし。脚本も素晴らしい。
韓流ドラマはかりでなく、こういうシリーズこそDVD化してほしいですね!
2012年08月12日 15:24
「さーちゃん」へ
コメントありがとうございます。20年前のドラマなのにいまだに印象深く、再放送を希望しているかたが多いのは嬉しい驚きです。 脚本もいいし、「史実」であるのも素晴らしいし、俳優さん、特にチャキリスさんと檀ふみさんがよかったですね。意見がまったく一致です。NHKさん、また再放送をお願いします!
八雲大好き
2014年06月24日 23:15
30年前の放送時からの大ファンです。当時はビデオ録画しましたが、10年くらい前に、確か「日本映画専門チャンネル」で再放送がありました。あの時は嬉しかったですね。さっそくDVD にダビングし宝物にしてました。先週松江・出雲大社に旅行し八雲旧邸や記念館を見学したので、久しぶりにドラマを観ました。30年前の出雲大社は本殿まで撮影され、塩見縄手や宍道湖など松江の景色が美しく描かれていました。ジョージ・チャキリスの熱演と初々しい壇ふみのブロークン・ジャパニーズがほほえましいです。脇役陣も今はもう亡くなられた方々も多く懐かしかったです。
私と同じようにファンの方が大勢いらっしゃると知り、嬉しくなりました。
casablanca
2014年06月28日 18:44
八雲のファンとお聞きし大変嬉しく思います。今、多分50歳未満の方々、特に若者は、ラフカディオ・ハーンの作品はおろか、彼の名前さえも知らない世の中になりました。ハーンは「怪談」だけではなく、日本紹介の著書において、その民俗学的哲学的見識の偉大な作家であったことをこれからの世代にも伝えていかなければ、と思います。このドラマはほんとに埋もれさせたくない素敵な大作です。DVDにダビングされたとは、素晴らしい宝物になりましたね。
了胡
2014年07月23日 11:11
あの頃はまだ小さかったでしょうか?
時折ある放送を待ちわびて、とても大好きだったのを覚えています。
有名なダンスのアダムとイブの映画はその後何年もしてから見ました。
朔太郎のアンソロジーに、八雲と奥様のエッセイがあり、ドラマを懐かしく思い出したりします。
もう一度見たいドラマです。
録画をお持ちとは幸せですね。
ハイビジョン番で甦るなんて謳い文句で、是非NHKさんに再放送と、DVD発売をしてもらいたいです。
casablanca
2014年09月07日 09:47
了胡さま  コメントありがとうございました。本当に、NHKにはぜひ再放送としていただきたいですね。それにDVDも。 他のリメイク版ではなく、あの時の映像をぜひ。
Schonbrunn
2015年02月28日 19:18
ドラマを見てから、もう30年になるんですね、妻と一緒に見て2人して感動しました。是非もう一度見たいと思っています。
2か月後、妻と松江・出雲の旅行を計画しています。再放送がないので、山田太一氏の単行本を読んで記憶を再生している昨今です。本の方も素晴らしいです。「忘られぬ日本の面影」も時間があれば読んでみたいと思っています。
casablanca
2015年03月05日 19:06
Schonbrun様 コメントありがとうございました。ブログ事務局の不具合で長いことコメントが反映されず、今日ようやく読ませて頂きました。 
「日本の面影」は30年経っても多くの人の心に残るドラマなのだと改めて思います。松江のご旅行でハーンの面影を感じていらしてください。そのためにもドラマや原作など読むといっそう印象深い松江になるかと思います。奥様とのいい思い出になりますよう。
HACHI
2015年06月19日 06:08
リアルタイムで観てました。素晴らしいドラマでした。一時期、DVDなどは出ていないのか?探しました。何故?無いの?チャキリスさんも壇ふみさんも素敵でした。確か帝国大学の後任講師が夏目漱石だったはず。歴史を感じます。「ニッポン、イケナイ」戦争に踏み出す日本に警告してましたね。耳に残っている言葉です。其の後、八雲の本を拝読しました。八雲がますます好きになりました。だからまた観たい。コメントが多数寄せられていますね。こんなにもこのドラマが好きな人が居たなんて・・・わたしは是非ブルーレイ、DVD化を!
casablanca
2015年06月25日 22:16
HACHIさま この『日本の面影』はその後今日まで紺野美紗子さんや草刈正雄さんなどが舞台で上演して人気を得ています。が、TV映像だからこそ惹かれるものがありますよね。まず時間をたっぷりかけてハーン作品の怪談の世界にまで踏み込んでいます。
なんといってもチャキリスさんと壇ふみさんのカップルがステキでした。ぜひ再放送かDVDを出して欲しいです。
AN
2015年07月24日 13:09
私も大好きなドラマでした。
BSで再放送があったそうですが、それh全話でしたか?もし全話でなかったとしたら、DVDが出ていないのは、NHKに揃ってないからかも?(確認はしていませんが)
大河ドラマなども、NHKには残っておらず、一般視聴者が録っていたものをNHKが探し当てて云々、というケースがあります。大河「草燃える」や少年ドラマなど、それで復活しました。
「日本の面影」はそれら(70年代)よりあとですので、全話が視聴者提供で揃う確率は格段に高いです。その線から押してゆけば実現可能かも。
ただし出演者の誰かがなにかの事情で不可と言っているのだったら、だめですが。ここを一度確認してみたいものですね。
casablanca
2015年07月26日 23:40
ANさま 再放送は全話でした。 多くの人から感動された「日本の面影」だということを改めて感じました。NHKのかた・・・DVDを作ってください! チャキリスさんのこのドラマです!  DVDがためなら再放送をしてほしいですね。
日本の面影
2017年01月28日 00:48
本放送、BS再放送を観た方はテレビ脚本と小泉節子さんの「思ひ出の記」も一読なさっては、どうでしょうか。また、大変申し訳ないのですが、小泉節子さんを演じたのは壇ふみさんではなく檀ふみさんです
casablanca
2017年01月30日 18:41
日本の面影さま  小泉節子さんの「思ひ出の記」読みました。家庭での父・夫としてのハーンが書かれており感動しました。ハーンの長男の一雄さんの「父小泉八雲」も合わせて読んでくださると八雲についての家族の思いがより深く得られます。
なお、檀ふみさんのお名前「檀」が間違っていましたこと気がつかず、ご指摘ありがとうございました。
ザクレロ
2019年07月16日 19:25
祝! CS放送の日本映画専門チャンネルにて9月頃に「日本の面影」の放送が決定しましたよ! リクエストして甲斐があります。
私は初見なのでとても楽しみです。
casablanca
2019年08月23日 18:27
ザクレロさん
「日本の面影」再放送のお知らせ、ありがとうございます!
気をつけてみています。何か正確にわかりましたらお知らせくださいますか?
2019年09月26日 17:03
初回、録画したものを観て詳しく知りたくこちらに来ました。
次回(2話)は日本映画専門チャンネルで10/2(火)午後6時30分~(1)(2)話、連続で放送されます。